「八卦派姓名学」── 中国古典の易学に登場する八卦(はっか/乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤)を姓名判断に応用した流派です。画数を卦に変換し、卦の象意で運勢を読み解く独特の体系を持ちます。本記事では、八卦派の理論的特徴、主要文献、熊崎式・三才五行派との違いを史実ベースで整理します。
八卦とは ─ 易学の根本記号
「八卦」は中国古典『周易(易経)』に基づく8種類の象徴記号で、3本の陰陽爻の組み合わせから成ります。乾(けん/天)、兌(だ/沢)、離(り/火)、震(しん/雷)、巽(そん/風)、坎(かん/水)、艮(ごん/山)、坤(こん/地)の8卦が、自然現象と人間の状況を象徴的に表します。
8卦をさらに重ねて64卦・384爻が作られ、これが易占の根本記号となります。八卦そのものは方位・季節・家族関係・身体部位などとも対応づけられ、東洋占術全般の基盤的記号として広く用いられています。
- 乾(天)父・健・剛・西北・秋冬。
- 兌(沢)少女・喜・西・秋。
- 離(火)中女・明・南・夏。
- 震(雷)長男・動・東・春。
- 巽(風)長女・入・東南・春夏。
- 坎(水)中男・険・北・冬。
- 艮(山)少男・止・東北・冬春。
- 坤(地)母・順・西南・夏秋。
八卦派の運用 ─ 画数から卦への変換
八卦派姓名学では、姓名の画数(天格・人格・地格など)を8で割った余りに基づいて八卦を割り当てる流儀が一般的です。たとえば天格=乾、人格=離、地格=震、というように三層の卦を求め、それらの組み合わせで運勢を読みます。
天と人の卦を上下に組み合わせて重卦(六爻の卦)を作り、その卦の卦辞・爻辞を参照することで、より詳細な象意を得る運用もあります。これは易占そのものに近づく高度な使い方で、命名相談の現場では限定的に用いられます。
主要著作と歴史
八卦派姓名学は、独立した「決定版」を一冊で特定するのは難しく、戦前から戦後の姓名判断書の中に章として八卦運用を扱う流派群が分散しています。熊崎健翁『姓名学大全』(1934)にも易学的解釈の言及があり、八卦派は熊崎式・三才五行派と境界が曖昧な領域として展開してきました。
易学そのものの主要典拠は『周易(易経)』。日本における近代易占の標準は、明治期の高島嘉右衛門による『高島易断』(1886)で、これは八卦派姓名学の周辺資料としても参照されます。
競合流派との違い
熊崎式(五格剖象法)との違いは、画数を直接81数霊に当てはめるのではなく、いったん八卦に変換して象意で読む点です。象徴解釈の幅が大きく、機械的な吉凶判定ではなく状況的な助言を引き出せるのが八卦派の特徴です。
三才五行派との違いは、五行(木火土金水)ではなく八卦(乾兌離震巽坎艮坤)を媒介とする点です。両者ともに陰陽五行思想を共通基盤としますが、媒介記号の違いで読み方の質感が変わります。
現代における位置づけ
八卦派は現代の姓名判断界では少数派で、熊崎式や三才五行派と比べて市場シェアは限定的です。一方で、易占を専門とする鑑定者や、東洋古典に詳しい命名相談所では今も活用される技法です。
本サイトの易学パートでは、八卦と64卦の解説を整備しており、姓名判断と並行して易占の視点を持つことができます。八卦派的な視点を直接組み込むのは将来的な検討課題です。
著名な使用例
易学・易占に造詣の深い命名者が、八卦派的視点を取り入れて命名する事例があります。屋号・社名命名で「八卦の象意に沿った名」を選ぶ流儀は、伝統工芸・老舗の世界で限定的に確認できます。個別の有名例の特定は確証が得にくいため本記事では避けますが、明治期以降の老舗商家・神社の命名所で八卦的な象意を意識した命名が行われてきたことは、地域の伝承資料に断片的に残されています。
近年では、易占を中心に据える鑑定者が起業家・社名命名の相談に応じる際、八卦の象意を姓名と組み合わせて助言するケースが見られます。たとえば社名画数から導いた卦が「巽(風/入)」であれば「市場に入り込んでいく営業力」を象徴する、といった解釈です。
学術的評価
易学・八卦そのものは、中国哲学・宗教学・民俗学の確立された研究対象です。日本における易占の近代史も、明治期の高島嘉右衛門以降、多くの研究蓄積があります。八卦を姓名判断に応用する八卦派は、その応用領域として位置づけられます。
ただし、姓名と運命の因果性は他流派同様、実証的に確立されているわけではありません。八卦派の価値は「機械的な吉凶ではなく、象徴を読む知恵」を提供する点にあると本サイトは考えます。命名の物語づくり、屋号や社名の方向づけ、家族の納得感を深める助けとして、八卦派の象意は今も生きています。
本サイトとしては、八卦派の伝統と限界を踏まえつつ、易学パートと姓名判断パートを連携させて、利用者が古典の知恵を多面的に学べる構成を志向しています。

全世界の姓名判断や鑑定、占いを統合し、その英知を42年間学び続けた占い師。伝統的な熊崎式姓名判断に中国・韓国・台湾など東アジアの命名哲学、さらには西洋の数秘術までを横断的に研究。姓名判断大全の全記事を監修し、赤ちゃんの命名から改名・社名決定まで、実務的な指針の提供を使命としている。
