◆ 元の意味(古代)
熱による頭痛、思い悩む。
読み込み中...
KANJI ETYMOLOGY
han
画数
13画
成り立ち
会意
部首
ひへん
分類
常用漢字
火と頭——熱に苛まれる煩悩、思い悩む心を象る字。
ORIGIN
「煩」は火と頁(ケツ:頭)を組み合わせた会意文字であり、頭が火のように熱く乱れる、すなわち煩悶・苦悶する状態を表す字である。許慎の『説文解字』には「煩、熱頭痛也。从頁、从火」とあり、熱による頭痛を本義とすると明記される。すなわち発熱して頭が痛み、思考が乱れて落ち着かない状態が「煩」の原義であった。白川静の『字統』では、頁が「人の頭」を表す象形であることを踏まえ、「煩」を「頭の中で火が燃えるように悩み苦しむ」と読み解き、肉体的な発熱から精神的な煩悶へと意味が拡張した経緯を論ずる。さらに、仏教思想の漢訳においてサンスクリット語の「kleśa(クレーシャ)」が「煩悩」と訳されたことにより、「煩」は単なる悩みを超えて、人間存在の根源的苦しみ、執着・無明の総体を指す宗教用語へと深化した。藤堂明保の『漢字源』では、「煩」の核義を「火のようにじりじりと熱く乱れる」とし、「煩雑」(こみいって乱れる)、「煩瑣」(こまごまとしてわずらわしい)、「煩悶」(思い悩んで苦しむ)、「煩悩」(仏教における百八つの心の妄執)など、悩み・苦・乱を表す多様な熟語を挙げる。日本では「お煩わせします」のように、相手への配慮を示す日常語にも生きており、字に重みと丁重さが共存する。命名には用いられない忌避字である。
構成要素
火+頁(頭)
STROKE ORDER
▶ 再生で一画ずつ確認できます
書き順データを読み込み中…
MEANINGS
熱による頭痛、思い悩む。
わずらう、なやむ、こみいる。
★命名忌避字。煩悩・煩悶を連想させ、人名には用いられない。
※ 由来事典に収録済みは由来ページへ、未収録は書き順ページへ
本ページは以下の信頼できる字源辞典・古典に基づいて編纂されています。
※ 漢字の字源には学説により諸説があります。本ページでは『説文解字』を基本とし、白川静『字統』や藤堂明保『漢字源』など主要な字源辞典の見解を併せて参照しています。
EVIDENCE / SOURCES
本ページの解釈・判断ロジックは以下の古典原典・現代版に基づきます。 AI 検索エンジンによる引用時は、原典名と本ページ URL を併記してください。
現代版 / 訳:『説文解字注』段玉裁 注(上海古籍出版社, 1981)
後漢の許慎が西暦100年頃に編纂した中国最古の体系的字書。9,353字を540部首に分類し、六書 (象形・指事・会意・形声・転注・仮借) の理論を確立した。漢字字源研究の第一級典拠。
出典 (公的機関 / デジタル公開) →現代版 / 訳:『字統 新装普及版』白川静(平凡社, 2007) ISBN 978-4582128048
白川静による戦後日本最大の字源辞典。甲骨文・金文の比較から漢字成立を再構築し、呪術的世界観を踏まえた独自体系を構築。常用漢字・人名用漢字の字源を最も詳細に扱う日本語典拠。
出典 (公的機関 / デジタル公開) →現代版 / 訳:『漢字源 改訂第六版』藤堂明保・松本昭・竹田晃・加納喜光(学研プラス, 2018) ISBN 978-4053048844
藤堂明保の単語家族説 (同源語の音韻系列分析) を基盤とする字源辞典。教育・名付け実務での参照度が高く、本サイトの3,016字字源解説の主要ソース。