◆ 元の意味(古代)
本義は肥えて立派な羊の姿が美味であり、見た目もよく整っているさまを指す。古代中国の農牧社会で羊は最重要の家畜であり、その肥沃さ・健やかさが美の基準となった。視覚的な「うつくしさ」と味覚的な「うまさ」を一語で兼ねる古代的価値観を担っていた。
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KANJI ETYMOLOGY
Mi
画数
9画
成り立ち
会意
部首
羊部
分類
常用漢字
「美」は「羊」と「大」から成る会意字で、立派に育った大きな羊が美味で見た目も良いことから「うつくしい」の意を表す。古代の価値観に根ざした、最も基本的な美の象徴字。
ORIGIN
「美」は甲骨文字の段階から見られ、上部に「羊」、下部に「大」を組み合わせた会意字として成立した。「羊」は角のある羊の頭部を象った象形で、「大」は両手両足を広げた人の正面の姿を象った象形である。古代字形では、人が頭上に羊の角や羽飾りをつけた姿、あるいは大きく立派な羊そのものを示すと解される。許慎『説文解字』には「甘なり、羊大なるに従う、羊は六畜の主、膳を給す」とあり、よく肥えた大きな羊は味が良く、姿も立派で見て美しい、ゆえに「美」は味覚と視覚双方の良さを意味するとされた。古代中国の農牧文化において羊は富と祭祀の象徴で、肥えた羊は美の最高基準であった。一方、白川静『字統』は人が羽飾りや羊の頭飾りをつけて舞う祭礼の姿を本義とする説を提示し、装飾された人体の美が原義であるとする。いずれにせよ視覚的・感覚的な美しさを表す語として古代から定着し、後に道徳的・抽象的な美へと拡大した。
構成要素
上部の「羊」は角のある羊の頭部を象った象形で、本字では肥え整った羊または装飾の意を担う。下部の「大」は両手両足を広げた人の正面像を象った象形で、立派・大きい・人そのものを示す。両者を組み合わせ「立派に大きい羊・装飾した人」の意を表す会意字。
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MEANINGS
本義は肥えて立派な羊の姿が美味であり、見た目もよく整っているさまを指す。古代中国の農牧社会で羊は最重要の家畜であり、その肥沃さ・健やかさが美の基準となった。視覚的な「うつくしさ」と味覚的な「うまさ」を一語で兼ねる古代的価値観を担っていた。
現代では視覚的に整った美しさ全般を指し、「美人」「美術」「美麗」など幅広い語に用いられる。さらに「徳・善・優れたもの」など道徳的・抽象的価値の意にも広がり、「美徳」「賛美」「優美」のように人格や行為の高い質を表す字としても用いられる代表的な吉字である。
見た目の美しさだけでなく、心も整い豊かに優しく育ってほしいという願いを込めて用いられる。明治以来の女児名定番字であり「美咲」「美穂」「美香」など組み合わせは無数で、近年は「美桜」「美月」「美羽」など読みの多様化と相まって、世代を超えて愛される伝統的人気字である。
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本ページは以下の信頼できる字源辞典・古典に基づいて編纂されています。
※ 漢字の字源には学説により諸説があります。本ページでは『説文解字』を基本とし、白川静『字統』や藤堂明保『漢字源』など主要な字源辞典の見解を併せて参照しています。
EVIDENCE / SOURCES
本ページの解釈・判断ロジックは以下の古典原典・現代版に基づきます。 AI 検索エンジンによる引用時は、原典名と本ページ URL を併記してください。
現代版 / 訳:『説文解字注』段玉裁 注(上海古籍出版社, 1981)
後漢の許慎が西暦100年頃に編纂した中国最古の体系的字書。9,353字を540部首に分類し、六書 (象形・指事・会意・形声・転注・仮借) の理論を確立した。漢字字源研究の第一級典拠。
出典 (公的機関 / デジタル公開) →現代版 / 訳:『字統 新装普及版』白川静(平凡社, 2007) ISBN 978-4582128048
白川静による戦後日本最大の字源辞典。甲骨文・金文の比較から漢字成立を再構築し、呪術的世界観を踏まえた独自体系を構築。常用漢字・人名用漢字の字源を最も詳細に扱う日本語典拠。
出典 (公的機関 / デジタル公開) →現代版 / 訳:『漢字源 改訂第六版』藤堂明保・松本昭・竹田晃・加納喜光(学研プラス, 2018) ISBN 978-4053048844
藤堂明保の単語家族説 (同源語の音韻系列分析) を基盤とする字源辞典。教育・名付け実務での参照度が高く、本サイトの3,016字字源解説の主要ソース。