◆ 元の意味(古代)
心が境界に立ち定まらず乱れる
読み込み中...
KANJI ETYMOLOGY
waku
画数
12画
成り立ち
形声
部首
心(こころ)
分類
常用漢字
境界に揺れる心。判断の岐路に立つ思慮の深さを示す字。
ORIGIN
「惑」は心を意味する「心」と、音符「或(ワク・コク)」から成る形声文字である。『説文解字』に「亂也。从心或聲」とあり、心が乱れ定まらない状態を意味する字と定義された。許慎は「亂」と訓じ、迷いと混乱の中核字としてこれを挙げている。白川静『字統』は声符「或」を、戈(ほこ)で囲い・境界を守る形と解し、「域」「國」の原字とする。「或」が境界を意味することから、「惑」は「境界線上で心が揺れ、どちらに進むべきか定まらぬ状態」を表すと説く。すなわち単なる無知の混乱ではなく、複数の選択肢の間で熟慮する深い思索の字である。藤堂明保『漢字源』も「或」声系に「区切る」「迷う」の含意を見出し、「惑」を「心が枠の中で巡り定まらぬ状態」と解釈する。『論語』の「四十而不惑(四十にして惑わず)」は最も有名な用例で、孔子が四十歳で人生の判断に迷わなくなったことを述べた。すなわち「惑」は若年期の真摯な探求と思索を示し、これを克服することが人格的成熟の指標とされた。仏教では「煩悩」を「惑」と称し、修行の対象とした。命名には通常用いられないが、字源は「真剣に考え抜く慎重さ」「岐路に立つ思慮深さ」という哲学的な美徳を示す字である。
構成要素
或(戈と囗の会意・音符ワク)+心
STROKE ORDER
▶ 再生で一画ずつ確認できます
書き順データを読み込み中…
MEANINGS
心が境界に立ち定まらず乱れる
まどう。迷う。心が乱れる。
思慮深さ、真剣な熟慮(命名には不適)
※ 由来事典に収録済みは由来ページへ、未収録は書き順ページへ
本ページは以下の信頼できる字源辞典・古典に基づいて編纂されています。
※ 漢字の字源には学説により諸説があります。本ページでは『説文解字』を基本とし、白川静『字統』や藤堂明保『漢字源』など主要な字源辞典の見解を併せて参照しています。
EVIDENCE / SOURCES
本ページの解釈・判断ロジックは以下の古典原典・現代版に基づきます。 AI 検索エンジンによる引用時は、原典名と本ページ URL を併記してください。
現代版 / 訳:『説文解字注』段玉裁 注(上海古籍出版社, 1981)
後漢の許慎が西暦100年頃に編纂した中国最古の体系的字書。9,353字を540部首に分類し、六書 (象形・指事・会意・形声・転注・仮借) の理論を確立した。漢字字源研究の第一級典拠。
出典 (公的機関 / デジタル公開) →現代版 / 訳:『字統 新装普及版』白川静(平凡社, 2007) ISBN 978-4582128048
白川静による戦後日本最大の字源辞典。甲骨文・金文の比較から漢字成立を再構築し、呪術的世界観を踏まえた独自体系を構築。常用漢字・人名用漢字の字源を最も詳細に扱う日本語典拠。
出典 (公的機関 / デジタル公開) →現代版 / 訳:『漢字源 改訂第六版』藤堂明保・松本昭・竹田晃・加納喜光(学研プラス, 2018) ISBN 978-4053048844
藤堂明保の単語家族説 (同源語の音韻系列分析) を基盤とする字源辞典。教育・名付け実務での参照度が高く、本サイトの3,016字字源解説の主要ソース。