◆ 元の意味(古代)
上から手で押さえる、鎮める
読み込み中...
KANJI ETYMOLOGY
yoku
画数
7画
成り立ち
形声
部首
扌(てへん)
分類
常用漢字
上から静かに押し鎮め、内なる気を整える節度の手
ORIGIN
『説文解字』手部に「抑は按なり。手に從ひ卬聲」と説く。意符「扌(手)」と声符「卬」から成る形声字である。声符「卬」は人が仰ぎ立つ形であるが、藤堂明保『漢字源』は、卬には「上に立ち上がるもの」を逆に上から押さえ込むという反転的イメージが込められていると分析する。すなわち「抑」とは、頭をもたげて伸び上がろうとする勢いを、手で上から鎮静させる動作を本義とする。白川静『字統』は、古代において祭祀や儀礼の場で激情・憤怒・狂気を鎮静させる呪術的所作と関連づけ、心身の動きを制御する精神的働きをも内包する字とみる。『詩経』『書経』には「抑揚」「抑損」の語が見え、自己を低くし、他者を立てる謙譲の徳とも結びついた。『論語』憲問篇に「克己復礼」の精神があるように、抑は単なる抑圧ではなく、過剰を整え、調和へと導く節度の働きである。漢文では発語の助辞「そもそも」として用いられ、思考を一旦立ち止まらせて整える機能語ともなった。日本語においても「抑制」「抑揚」「謙抑」など、感情・声調・態度を整える熟語に多く現れる。「抑」は、力で押さえつけるのではなく、過剰を慎ましく鎮めて全体の均衡を保つ、内省的で成熟した精神性を象徴する字といえる。
構成要素
扌(手)+ 卬(仰ぎ立つ、声符)
STROKE ORDER
▶ 再生で一画ずつ確認できます
書き順データを読み込み中…
MEANINGS
上から手で押さえる、鎮める
おさえる、抑制する、抑揚、そもそも
感情を制し全体の調和を保つ、思慮深く落ち着いた人格
※ 由来事典に収録済みは由来ページへ、未収録は書き順ページへ
本ページは以下の信頼できる字源辞典・古典に基づいて編纂されています。
※ 漢字の字源には学説により諸説があります。本ページでは『説文解字』を基本とし、白川静『字統』や藤堂明保『漢字源』など主要な字源辞典の見解を併せて参照しています。
EVIDENCE / SOURCES
本ページの解釈・判断ロジックは以下の古典原典・現代版に基づきます。 AI 検索エンジンによる引用時は、原典名と本ページ URL を併記してください。
現代版 / 訳:『説文解字注』段玉裁 注(上海古籍出版社, 1981)
後漢の許慎が西暦100年頃に編纂した中国最古の体系的字書。9,353字を540部首に分類し、六書 (象形・指事・会意・形声・転注・仮借) の理論を確立した。漢字字源研究の第一級典拠。
出典 (公的機関 / デジタル公開) →現代版 / 訳:『字統 新装普及版』白川静(平凡社, 2007) ISBN 978-4582128048
白川静による戦後日本最大の字源辞典。甲骨文・金文の比較から漢字成立を再構築し、呪術的世界観を踏まえた独自体系を構築。常用漢字・人名用漢字の字源を最も詳細に扱う日本語典拠。
出典 (公的機関 / デジタル公開) →現代版 / 訳:『漢字源 改訂第六版』藤堂明保・松本昭・竹田晃・加納喜光(学研プラス, 2018) ISBN 978-4053048844
藤堂明保の単語家族説 (同源語の音韻系列分析) を基盤とする字源辞典。教育・名付け実務での参照度が高く、本サイトの3,016字字源解説の主要ソース。